生きていればこそ。

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年末年始に日本に一時帰国した際、父の様子があまりよくありませんでした。その前から入退院を繰り返しており、入院の理由もあまりいい感じとはいえない病状…。

父は10年以上も前に癌になりました。場所がよい場所でなく、ステージも悪かったので、5年後の生存率はとても低いとされた経緯があり、これだけ長生きしているのはむしろ奇跡…と言える部類なのですが、なんといっても遠くに住んでいる身、今回が会えるのが最後になるのかもしれない、と何度も思ったことがあります。

年末年始に会った際は、もう生きたくない、というようなことも言っており、それが本当の本心なのかどうかは分かりませんが、こういう風に言われてしまうともう…私なぞは何も言えなくなってしまいます。比較的元気な方にだったら、美味しいものでも食べて元気だして~みたいなこと、言えますけど、きっと治療も楽しいものではないでしょうしね…。

初詣にももう行かない、と言い出し、ちょっと…どうなんだろう、と思いました。毎年、これだけは熱心に行っていた人ですから。

話は変わって。いつだったか分かりませんが、今年の春先頃、職場に奇妙な電話がかかってきました。オランダ人だったのですが、その人曰く、「90年代にあった出来事に関して、その出来事に関連していると思われる日本人を探している」というもの。

あなただったらどうします?こんな電話?

私…?内心、あー困ったな~、変な電話だ~…と思いつつ、適当に理由を言って電話を切ろうとしました。ところが、その人は意外と食い下がるのです。そして、彼は「探している人は切手収集家なんだ」と言いました。

切手収集家…。そう聞いてつい、私は言ってしまいました。「うーん、父も切手収集家だけどね。」

その言葉を聞いて、その男性の声は急に明るくなりました。「ほら、どうだ!」と言わんばかりで、もしよかったらその探している人を知っているかどうかお父さんに聞いてみてくれないか?と尋ね、電話が切れました。その後、経緯を示すメールがすぐに届きました。

…うーーーん。それを見ても、まだ私は渋っていましたが、まぁ聞くのはタダだし。父だってイヤだったらやらないだろうから、ここで私が結論を出すのもなんだな、と思い、結局父に聞いてみることにしたのです。

よく考えると、こういう案件があれば、メールも出しやすくなります。普段、、、病気の親に向かって「元気ですか~?」なんて馬鹿なメールは出せませんし(苦笑)、普段ちょくちょく会うわけではないから、共通の話題もなかなかありませんし。

そういうワケで、父にメールをし、まぁやることはやった!と思っていたところ、しばらくたって、父と父の知り合いと思われる方々からメールが届きました。どうやら、その探している方はこの人ではないか、というメールだったのです。

父は、きちんと知り合いの方々にメールを出して、尋ねてくれていたのです。その探していた人は、自営業をやられている方だったのでインターネットに顔も出ており、電話番号も書いてあったので、なんとかつながった、という感じで、私も喜んで電話をかけてきたオランダ人に連絡しました。

すると、その人は、なんと…いきなりその日の夜、日本に電話をかけちゃったんですね~。スゴイ!いきなり電話をもらった相手は大層驚いたでしょうけど、結局、その人=自分が探していた人ということが分かり、興奮して私に連絡してきました。なんでもそのオランダ人男性は10以上の日本の切手関係者に詳細を尋ねまわったものの回答はひとつとして得られず、日本行きさえ考えていたというのです。まーなんとなく分かります、、、日本って、一見さんお断り文化がある、というか…単独外国人が何か質問してきたら絶対警戒しますよね、、、。

結局、あれこれあって、私まで日本のその方に連絡する羽目になっちゃったりしたんですが、ともかくそのオランダ人は大層喜び、私自身も人助けをした、ということで、まぁ良かったですねえ、いいことをした、ちゃんちゃん、で話はいったん終わったのです。

しかし、話はここから大きくなってきました。実は、そのオランダ人というのは作家で、今回本を書くにあたり、ノンフィクションなので、適当に書くわけにはいかない、と当時の事件を知る日本人を探していた、ということだったのです。

しばらくして、彼から連絡があり、私たち親子はこの本の中でとても重要な役割を果たした人だから、実名・写真付きで本に載せたい、とのことでした。父の許可を得たので、写真を提出したところ、またしばらく経って本が出来上がったとの連絡がきました。

内容が分からないのでなんとも…なのですが、出版社からの評判は良いらしく、なんと、オランダだけでなく、チェコ、北欧数か国で販売されることがすでに決まり、他の言語国も現在打診中とのこと。

ウッソー。そんな大がかりなものだったんだ?…最初に電話をした当初からは考えられない広がりっぷりで、私自身も驚いています。

この本はまず8月中旬にチェコで販売開始されたのですが、色んな縁が重なり、とある方を介して、父はすでにこのチェコ語バージョンの本を手に入れたそうです(私は見ていない…汗)。それを見て、父は喜んでいるのかどうか、、、は分かりませんが、チェコはヨーロッパ内でも有数の切手収集大国ですし(父自身もたくさんのチェコの切手を持っているとのこと)、そこで自分の名前と写真が載った本が販売されるというのは、名誉とまでは言わずとも、まぁ少なくとも非日常的な出来事なんじゃないかな、と思います。

私はこの出来事を通して、当たり前のことを実感する日々でした。すなわち、死んでしまったら、死んでしまった人のつながりとか、記憶とか、そういうものも消えてしまうものなのだなあ、ということ。この件も、父が生きていなかったら、まったくお手上げで、私は何の役にも立つこともなく、かかわることもなかったわけで。

父の切手収集に関しても、私は今までまったく興味なく、話を聞こうという気もありませんでしたが、切手収集というのはその切手にまつわる歴史をひも解くものである、ということを今回知り、なるほど、それで父はヨーロッパのことをよく知っているのかも、と思ったり…。

今回知り合った方々も、まぁなんというか地位の高い方々が多く、、、それは切手収集がお金のかかる高尚な趣味である、ということもあるけど、何より小さな一枚の紙は国家の歴史・人々の生活や習慣が大きくかかわるもので非常に強い好奇心がなくてはやっていけないものなのだ、ということを痛感したのでした。

まあともかくもそんなわけで、今年の年初に会ったときは、どうなることやら…という感じでしたが、チェコの本を送ってくれた方に9月の切手の会にも参加するというメールを送っており、ちょっとはやる気も出てきたのかも…?と、勝手に憶測しています。いいぞ、いいぞ。

「生きていればこそ」…今回のこの偶然の重なりは、そんな重い言葉さえも大げさではない、とそんな風に思えるほどの出来事でした。思わぬところから色んなものが舞い降りる…人生って面白いものですね~。

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Comment

makisuke | URL | 2018.08.26 23:32
ブログから遠ざかってからというものコメントまで遠ざかり、覗き見状態ですが、ちゃんと拝見しておりますよーーー。
りすちゃん、進級(進学?)おめでとうございます。新生活の様子もまた拝見したいです。
さてさて。本とは何ぞや?と思っていたのですが、そういうことだったのですねーー。縁とは不思議なもの。まだまだ生きろという天の声が聞こえてきそうです。感動!お父さんが元気になりますように!
そらのくも | URL | 2018.08.28 02:27
そうなんですよ。あちらでは詳細に書くスペースもなく、なんとなく思わせぶりなメッセージとなってしまいましたが…そういうことだったのです。おかげさまで、また少し元気にやっているみたいです。治るということはもうありませんが、少しでも楽しみを感じる日々になってくれるとよいなあ、と願っています!

ナイロン | URL | 2018.09.02 02:14
いやぁ、羨ましい、、って言い方かいいのかどうかわからないですが。
私の父は癌が発覚して手術をして1年程で他界してしまいました。
ま、16年も前の話ですけどね、、しかし私自身も悔いばかりが残りました。
ま、一番父自身がそうだったでしょうけどね。
離れて暮らすのは見えない分余計にマイナスな想像力が働いてしまうものですが、
そう、生きていればこそ、、です。
そらのくも | URL | 2018.09.04 01:16
ナイロンさん、

羨ましい…ていう気持ち、分からなくもないです。
うちよりずっと後に同じがんになられた方であっという間に亡くなられた方もいますし…。
うちの父のすごいところは、サイボーグ?で、その病状を乗り越える体に変革するってことですかね…。
抗がん剤の副作用も乗り越えて、ある日突然髪もフサフサ~…私より多いやん!とか、
もう歩けない…と聞いて寝た切りを想像して日本に帰ったら、あ、それは突然大丈夫になった~…て感じです。
食事もパクパク、え、そんなに食べるの~?て感じですし、、、。
今回も、どうやらその病状を克服したらしく、最近は少し元気にやっているようです。
もう駄目だ、と思ってもしぶとく生きていて、心中はどのようなものか分かりませんが、
私からするとラッキーな人なのかもしれない、と思います。
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